ネイマン・ピアソンの補題
【ネイマン・ピアソンの補題】
を帰無仮説及び対立仮説のもとでの密度関数(あるいは確率関数)とする。与えられたとに対してサイズがである次のような検定関数を考える。
\begin{align} \delta_{c,r}(x) = \begin{cases} 1 & (\frac{f(x, \theta_1)}{f(x, \theta_0)} > c)\cr r & (\frac{f(x, \theta_1)}{f(x, \theta_0)} = c)\cr 0 & (\frac{f(x, \theta_1)}{f(x, \theta_0)} < c) \end{cases} \end{align}
このとき、有意水準の検定のなかで、が最強力検定となる。
はい、いきなりそんなこと言われても困ります。ということで、毎度お馴染み弊家本棚の積読筆頭候補の『現代数理統計学』を参考に順を追ってみていきましょう。
まず、最強力検定とは何ぞやという話ですが、その前に少し準備をします。
検定関数:決定関数()
帰無仮説を棄却するなら1、受容するなら0を取る関数。
リスク関数: 損失関数の期待値(])
損失関数は、正しく判断ができなかった時に1をとる0-1損失関数とします。 期待値を取っているのは、が未知であり、損失関数の値自体も確率的に変動するので、単純に損失を最小化しよう、とはできないわけです。そのため平均的な損失を考えるか、ということでこのリスク関数というものが定義されています。
検出力関数:
を検出力関数といいます。 尚、先に見たリスク関数は、検出力関数を使って以下のように書けます。
\begin{align} R(\theta, \delta) = \begin{cases} \beta_{\delta}(\theta) & (\theta \in \Theta_{0})\cr 1- \beta_{\delta}(\theta) & (\theta \in \Theta_{1}) \end{cases} \end{align}
はい、話を戻して最強力検定について確認していきます。
を任意の有意水準の検定、すなわちとする。
この時、が有意水準の一様最強力検定(UMP)であるとは、
が成立する事である。
ここで、”一様”というのは全ての対立仮説()について検出力を最大化する、という意味であり、単純仮説()の場合は単に最強力検定と呼ばれるようです。
一旦ここまでの話を整理して、もう一度ネイマン・ピアソンの補題を見てみましょう。
サイズ(第1種の過誤の上限)がであるような検定を考えます。その中で最も検出力の高い検定を最強力検定と言います。ところで、冒頭で挙げたような検定関数を構成すると、そいつが噂の最強力検定です。
なんとか言ってることは分かりました。あとはこれを証明しましょう。 連続分布の場合の証明になります。(離散の場合も同様の議論)
【証明】
を有意水準の検定関数とした時、
が成立する(これは後で示す)が、これを以下のように整理することで題意が示せる。
\begin{equation} \begin{split} \beta_{\delta_{c,r}}(\theta_{1}) - \beta_{\delta}(\theta_{1}) = \int (\delta_{c,r}(x) - \delta(x))f(x, \theta_{1})dx \cr \ge c(\int (\delta_{c,r}(x) - \delta(x))f(x, \theta_{0})dx) \cr = c(E_{\theta_{0}} [\delta_{c,r}(X)] - E_{\theta_{0}} [\delta(X)] ) \cr = c(\alpha - E_{\theta_{0}} [\delta(X)] ) \cr \ge 0 \end{split} \end{equation}
の証明
であることに注意して、
の時
(そのように検定関数を作ったのでした)であることと、、また条件のを合わせて考えて、の被積分関数は非負になることが分かる。
の時
これも同様の議論によりの被積分関数は非負になることが分かる。
の時
この場合、の被積分関数は0になる。
以上の結果からが示せた。
はい、証明まで一通り追ってみました。*1 ネイマン・ピアソンと少しは仲良くなれそうでしょうか。
では今回はこの辺で、そりでわ。